東京と大阪で開催されたテート美術館展「LIGHT」について今更ながら語ってみる。

東京と大阪で開催されたテート美術館展「LIGHT」について今更ながら語ってみる。

LIGHT、光がテーマの展覧会

テー美術館展LIGHTサイン 

 中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド世界各国を巡回してきた展覧会の最後が大阪・中之島美術館で1月14日に閉幕しました。

入場者数は、東京20万人、大阪10万人越えとかなり盛況だったようです。

筆者は、閉幕の前日に行きました。ものすごい人出。見終えた頃に入場制限がかかるという偶然もありました。列の長さをみて、ダメだこりゃ(いかりや長介風)と帰る人も大勢いました。

テートってなんだ?

ところで、この美術展に行った人でも、テート美術館ってなんだ?という方も多いと思いますので、少し触れておきましょう。

英国には、ナショナル・ギャラリーというとても有名な美術館がありますが、このテート美術館も、もちろん英国を代表する美術ギャラリーです。

テートブリテン、テートモダン、テート・リヴァプール、テート・セント・アイヴスという4つの美術館があって、その4つでひとつのテート美術館を構成しています。ですので作品が、4つの館を移動することもしばしばあります。

特に、2000年、元発電所だったところを改装してテーとモダン美術館にしたことが当時話題になった記憶が・・・。

さて、この展覧会は、テート美術館のもつ膨大な作品群から「光」をテーマにしてキュレーションした展覧会。

自然の光、崇高な光、光の効果などの視点で構成されていました。

光」は、人の生活、精神に常に寄り添っていることを再確認させる展覧会でした。

ジョン・ブレッド《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》

ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》(1871年)

この作品は、縦106センチ横212.7センチ のとても大きな絵で、大勢の人が集まっていました。筆者もその一人です。

画面の上半分強を空が占め、下半分は海という構成。そのなかに描かれた太陽光線と照らされている海面。これだけ要素ですが、人を惹きつける何かがあります。

それは、おそらく生命が陽の光によって海から誕生したことが、我々のDNAに刷り込まれているからではないでしょうか。この絵を見ていると、一種の安らぎに似た感覚を覚えるのは私だけでは無いはずです。

そう、皆さんは、光と聞いてどんなことを思い、考えますか?

光。現代の生活には、なくてはならないものです。

ひとたび災害に襲われえると光は普段よりも、その重要性は増していきます。(能登半島の大地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。筆者も個人的にできることで応援していこうと思います。)

光は電磁波。その速度は秒速およそ30万キロメートル。この世で光よりも速い物質はありません。そして、その光が、我々にあらゆる色彩を見せてくれています。

つまり、光がなければ色も存在しない。もし、そうなれば私たちは、闇の中で無彩色の物質世界で生きていたのかもしれませんね。

光は、人に安心を与え、時として脅威を与えます。

ジョン・マーティン《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》

ジョン・マーティン《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》(1822年、2011年修復)

こちらの作品、縦161.6センチ、横253センチの大きな絵画。こちらも多くの方々が立ち止まり、見入ってらっしゃいました。

ポンペイといえば皆さんもよくご存知だと思います。紀元79年、一夜にしてヴェスヴィオ山の噴火で消えてしまった町。

もちろん作者であるジョン・マーティンは、その瞬間に立ち会ってはいませんが、想像力を働かせて、噴火によって恐ろしく赤く染まる空や、成すすべもなく逃げ惑う人間を描いています。

神・自然に立ち向かう人の無力さを描いた作品と言われています。

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英国の画家といえばターナー 

 1775年ロンドンのコヴェントガーデンに生まれ、1851年に亡くなった英国を代表する画家。光の画家、空気を描く画家とも言われていました。ターナーの作品も複数展示されており素晴らしいものがありました。

 ウィリアム・ターナーターナー《湖に沈む夕日》1840年頃

 ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》(1840年ごろ)

 彼は、空気を描く作家として、美術史にさんぜんと輝く名画をたくさん残しました。この作品は、晩年近くの作品で、その頃には細かい部分は、あまり気にせず、光と色の表現に強くこだわっていました。淡い色彩の光と空気。

大気は常にその姿を変えていきます。それをキャンバスに描いたのです。

彼こそがのちのモネやルノワールが主導した印象派に強い影響を与えたといいます。

印象派の作家たちは、対象の一瞬を捉え、その時の光を描きました。

モネ作《エプト川のポプラ並木》1891年 

クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》(1891年)

モネは、ウィリアム・ターナーの光の描き方を特に参考にしていたと言われています。刻々と変化していく雲の様子。そこにできる影。そして水面に反射するポプラも風に揺られ、川の流れに揺られ、ゆらゆらと常に動いています。

モネの連作は、同じ場所での光の変化を捉えたもの。モネにとっては、時間や天候などによって変化する光こそが描くべき対象だったのでしょう。

モネの庭に咲く花も、光がないとその鮮やかな色彩を見る事はできませんから。

 

現代アートの視点から 

もちろん、現代アートも展示されていました。

太陽の光からロウソクやランプ、電気による人工的にな光。人類の歴史とともに光は輝きを増してきました。

アートの世界においても、さまざまな絵画やインスタレーション、メディアートなどで光を表現する作品が多く制作されてきました。

オラファー・エリアソン作《星くずの素粒子》

 オラファー・エリアソン作《星くずの素粒子》(2014年)

こちらの作品は、いわゆる「映え」するのか、大勢の人が集まり広がって写真を撮っていました。

部分的に反射する多面体(球状)をさらに、金属の多面体で覆い、天井から吊るして光を当てる作品。

恒星が最後の時を迎えて爆発し、素粒子となって飛び散っていくことをイメージさせるインスタレーションです。

見る角度によっては、反射する光になんとなく色が付いているように見えたり、壁や床に映る光の濃淡など、ずっと眺めていられる作品でした。

私たちが、見ている物質の姿は、その瞬間の虚像か。

光の速度なのでほぼ同時なんですけど、厳密には対象の「今」とは、ズレが生じているわけです。見る角度、距離によってもそうです。

そう考えると壁に写っている本体らしき多面体は過去。我々は目の前で過去の映像を見せられているのか?そのようなことを考える作品でした。

まとめの感想をぶつぶつと。

およそ2万年前のラスコーの洞窟画(学校で習いましたよね?)では、動物の脂分を使うランプのような灯りの器具も見つかっています。(年代測定で1万数千年前のランプとわかっています。) 

そんな生きるための光から神、宗教の光、心の中の光、近代的な光。

そして自然の光はいつも世界を照らし続けています。この自然の光も遠い遠い太陽からの贈り物。

展覧会では、18世紀や19世紀の作品が多かったと感じます。その絵に描かれた光は、当時の瞬間を閉じ込めたもの。それを2024年に見ているのです。これだけでもアートって面白いなあと思いませんか。

そうアートと光はとても密接です。

光と傘も同じような関係。現代の生活に欠かせない関係となっていますね。

美術検定一級アートナビゲーター持ってるスタッフより

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